きっと叶うように

住職 釋 龍生

 昨今、世界各地で紛争や紛争の火種が絶えることなく続いています。ロシアのウクライナ侵攻では、停戦の試みが繰り返されますが、未だに解決の糸口が見えないし、イスラエルのガサ地区への攻撃においても同様で、深刻な人道的危機を引き起こしています。
 私が中学生の頃、ザ・チェッカーズという音楽グループが、当時の日本の音楽シーンにおいて圧倒的な人気を誇っていました。私も大好きで、シングルカットされたレコードやアルバムを買って、擦り切れるぐらい聴いていた思い出があります。そのザ・チェッカーズの曲に、
「I have a dream」という歌があります。歌詞を抜粋して紹介すれば、

もしも僕が違う国に生まれ 君と出会う 君と僕が自由に愛し合えますように

もしも僕が違う肌の色で君と出会う 君と僕が自由に愛し合えますように

昨日を変えることなど誰にも出来はしないけれど

明日を夢見ることは誰にだって出来るから今日より素晴らしい 明日を

もしも僕が違う神を信じ君と出会う 君と僕が自由に愛し合えますように

もしも僕がもしも君が先に眠りにつく きっと二人 永遠に愛し合えますように

I have a dream 僕のために I have a dream 君のために

I have a dream きっと叶うように

日本音楽著作権協会(出)許諾第2505918-501号

 日本ではバブルの崩壊後、日本の将来や未来に希望を持てない人々が増えていると言われます。また昨今のさまざまな世界の情勢においても、全体的に不安定さが拭えず、世界の多くの人が、その先行きに不安を抱えているのが現実でしょう。
 私たちは、ザ・チェッカーズの「I have a dream」の歌詞が表現する全世界の人々が、幸せに豊かに、あらゆる枠を超えて夢や希望を純粋に語れる、また実現できる、そんな世界の将来を、全世界の子どもに確実にもたらさなければならないと思います。
 自坊でおつとめしたある法要でのご講師のご法話に、こんなお話がありました。                
 私は、お浄土をいただいて生きるということは、未来と希望をいただいて生きるということと味わっています。人間は自分の未来が見えなくなった時、希望を失った時、絶望します。まだ未来が見える、希望が見える時は、人間は頑張ることができます。私たちは、明日が来る、来週が来る、来月が来る、きっと来年も元気で迎えることができるだろうと思って生きています。まだ見ない明日が、今日という1日を支えていてくれています。私たちは、この私の命を、この身を引き受けてくださるお浄土があるからこそ、私たちは今を、今日、この命を生きていくことができます。アミダさまは、「私のお浄土へ生まれたいと、私の願いを疑うことなく受け入れてくれたものを必ず救う」と約束されています。「大丈夫だよ、必ずあなたを、私のお浄土に生まれさせ、仏と仕上げるよ」と、これがアミダさまの願いであります、と。
 アミダさまは、私たちがどんな状態であろうと、二心なくお念仏をいただくものを必ず救うと約束してくれています。だからこそ、アミダさまの願いやお浄土をいただいて生きるということが、今、明日、未来を生きる希望への支えとなります。この世界の隅々までそんな安穏が、優しさに心温まる仏法が広まることを願います。
 息子の誕生日の夜、ニュースでイスラエルとイランの紛争が報道されていました。そのニュースを一緒に見ていた息子が、「ぼくの誕生日は、バクダンが落ちた日なの」と呟きました。私たちは近い将来に、こんな言葉を子どもに呟かせる世界の現状やあり方を、力を合わせて絶対に変えていかなければなりません。